一般会計は2.2%増の4720億円 県が新年度当初予算案発表
島根県は7日、2025年度当初予算案を発表した。一般会計は総額4720億円で、前年度当初より103億円(2.2%)の増となった。引き続きエネルギー価格・物価高騰対策に取り組む。人口減少対策を柱とする第2期島根創生計画の初年度であり、計画に掲げる産業の振興や子育て支援の充実などに力を入れる。
前年度より予算規模が増えたのは、ソフト事業に使う政策的経費の増加(前年度比26億円増の1139億円)が主な要因だ。子ども医療費助成に5億5千万円、事業者への省力化投資支援に計4億2600万円をあてる。
県の子ども医療費助成は、25年度から対象を中学生まで拡大。これが市町村の財源確保を後押しし、全19市町村で4月から子ども医療費助成の対象が18歳まで広がることにつながった。
省力化投資支援は、人手不足に対応して事業者が実施する省力化につながる設備投資の経費の一部を補助する。対象は農林水産事業者(予算額1億9500万円)や中小企業など(同2億3100万円)。
物価高騰対策としては、小中学校給食のコメ価格上昇分の市町村に対する支援に1億2500万円を計上した。
歳入でみると、国や借金(県債)に頼る「依存財源」が67%を占め、財政基盤は依然弱い。一方、県税収入は47億円増の829億円。定額減税の終了に伴って個人県民税が伸び、業績好調な企業もあって法人事業税が増えると見込む。
貯金にあたる財政調整基金の残高は25年度末で181億円と見込む。借金の残高は、国が補う臨時財政対策債を除いた通常の県債が、25年度末見込みで5177億円。第2期中期財政運営方針では、29年度末に財政調整基金残高180億円程度、通常県債残高5400億円程度とする目標を掲げている。
国土強靱(きょうじん)化対策などの施策を切れ目なく進めるため、199億円の一般会計2月補正予算案などと合わせた計5093億円を一体的に運用する。予算案は13日開会の県議会定例会に提案される。
政府の2025年度当初予算案では、石破茂首相肝いりの地方創生関連の交付金が2千億円と、前年度から倍増された。だが、島根県への交付は約13億8千万円の見込みで、前年度比約6千万円増にとどまる。
県財政課によると、交付対象が新規・拡充事業だけなのに加え、県では前年度で多くの交付金事業が終了。さらに事業費の半分は県が負担しなければならず、必要な事業を精査した結果、大幅な増額とはならなかったという。
26、27年度に予定している県民会館の大規模改修事業が交付対象に採択されれば、この2年間の交付金は計15億円増額する見込みという。
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主な新規事業を紹介する。カッコ内は2025年度の当初予算額。
バス運転手の労働環境改善へ支援(1900万円) 運転手不足によるバス路線の廃止・減便が相次ぐなかで運転手の確保を目指す。バス事業者に対し、休憩室や更衣室、トイレ、エアコンなど、運転手が利用する施設や設備の整備にかかる費用の2分の1を100万円を上限に補助。さらに、生活基盤を安定させ地元以外からの就職を促すため、2025~27年度に採用された運転手の賃貸住宅の家賃相当額の一部を、事業者を通じて支援する。1~2年目は月3万円、3~4年目は月2万円、5~6年目は月1万円。
生活交通の維持・確保を目指す官民のプロジェクトチームが昨年9月にとりまとめた課題解決の方向性の中に、運転手確保のために職場環境や福利厚生の改善に取り組むことが盛り込まれた。それを受けての事業で、県交通対策課の佐川賢一課長は「事業者だけでなく、県としても市町村と連携して人材確保に取り組みたい」と話す。
宍道高校舎をリースで整備(7797万円) 日本語指導が必要な海外出身の生徒や、集団生活になじめないなど教育上配慮が必要な生徒の増加に伴う教室不足を解消し、少人数教育を充実させるため、宍道高校(松江市)の校舎をリースで整備する。
将来の人口減少を見込み、本格的な校舎は新設せず、リース会社が整備した校舎を2026~35年度の10年間借りて使用する。鉄骨造り2階建て、延べ床面積約1300平方メートル。総事業費約8億円。25年度は主に備品購入。
出雲空港待合室を拡張(8528万円) 出雲空港(出雲市)の利用者数のピーク時でも対応できるよう、ターミナルビル内の県空港管理事務所を移転し、国内線の搭乗待合室を2027年度にかけて約100平方メートル広げる。現在の待合室は国内線465平方メートル、国際線286平方メートル。総事業費約7億円。25年度は設計。
朝ドラを活用した情報発信・誘客(5500万円) 松江ゆかりの文豪・小泉八雲の妻セツをモデルに描くNHK連続テレビ小説「ばけばけ」が今秋から放送されるのを機に、観光コンテンツの開発支援、ロケ支援、県外プロモーションなどを行う。
出雲市日御碕地区の孤立対策(1億4575万円) 昨年7月の大雨で崩落した県道の2026年度中の復旧を目指す。崩落したのり面に鉄筋を打ち込むなどして地盤を強化する。総事業費約3億2千万円(負担は国3分の2、県3分の1)。
また、災害時に日御碕地区が孤立しないよう、迂回(うかい)路となる長さ約2キロの林道を県が出雲市に代行して34年度までに整備する。総事業費約10億円(負担は国45%、県55%)。
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島根:朝日新聞デジタル 2025-02-08 [
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