岡山空襲 記憶つなぎたい 空襲展示室の学芸員、被害伝える講演会
「戦後80年の今だからこそ知っておきたい 岡山空襲の実態と被害」と題した講演会が岡山市内で開かれた。岡山空襲展示室(北区)の木村崇史学芸員が講師となり、1700人超が犠牲となった被害の概要を最新の研究を基に説明。会場がいっぱいとなる約50人が学んだ。
1945年6月29日の午前2時43分から4時7分にかけ、米軍のB29爆撃機138機が飛来。約9万5千発の焼夷(しょうい)弾を岡山市中心部に投下し、当時の市街地の63%が焼失した。少なくとも1737人が亡くなり、2千人以上との説もある。
木村さんは90枚近いスライド画像を用意して概要を紹介。米軍が現在の岡山中央郵便局前の交差点を爆撃中心点とし、そこから半径1.2キロの区域に焼夷弾を落として市街地の63%を焼き尽くしたなどと説明した。
米軍は東京や大阪といった大都市を徹底的に爆撃した後、狙いを中小の都市へ。さまざまな工場や陸軍兵舎があることなどで攻撃対象となり、岡山も含まれていたという。倉敷市街地も対象だったといい「大原美術館があるから免れたという声があるが、戦争が続いていたら米軍はそんな忖度(そんたく)をしなかっただろう」という。
岡山市中心部を流れる西川にかかる田町橋、本行寺の山門など、被災した建造物が数多く残ることも紹介。一方で岡山空襲は広島・長崎の原爆投下や東京大空襲ほどには知られていないとも指摘する。「岡山以外では『岡山で空襲?』という声を聞く」のが現実という。
木村さん自身、2012年に展示室の学芸員になってから空襲経験者に当時のことを聞き取るなどして継承に努めてきた。「証言して下さった方々に報いるためにも若い世代に伝えるのが務め。より分かりやすく紹介し、平和の大切さを改めて考える場をつくりたい」と話す。
講演会は5月31日に北区南方2丁目の県立記録資料館で開かれた。同館では所蔵資料展「戦争の記録と記憶を伝える」を開催中。戦中戦後の暮らしぶりや戦争体験などを写真や文書で紹介している。8月9日まで。
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岡山:朝日新聞デジタル 2025-06-06 [
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