年重ねても充実 めざす「自立」 「しなやかシニアの会」結成25年
老後はノンビリと好きなことをして過ごせると思っていた。だが現実は厳しいとわかった――。年齢がいくつになっても充実した生活を送ろうと「しなやかシニアの会」が大津市にできて25年。世の中は高齢化が急速に進み、「高齢者の自立」をめざした活動が目立つようになった。
大津市仰木の棚田を前に、70~80代の十数人が画用紙に向かい水彩絵筆を動かしていた。隣の絵と見比べ、良いところはまねし合う。
5月15日は天候に恵まれ、しなやかシニアの会・スケッチ倶楽部(くらぶ)のメンバーの会話も弾んだ。「ふだんは家にこもりがちなので外に出ておしゃべりできるのは楽しい」と言う。
会は大津市中央1丁目の商店街で昭和初期建築の町屋を借り、「リュエルしなやか」と名付けて拠点としている。メンバーは約100人(女性8割、男性2割)で、大津市在住の70代後半が多い。90代もいる。「スケッチ」「健康体操」「歴史」「お抹茶」「麻雀(マージャン)」の各倶楽部に分かれ、毎月1~6回ほど活動する。
倶楽部活動とは別に、佐藤明子代表(77)ら数人の運営メンバーで年間行事を考えている。
「シニアの目で、のぞいてみよう」という恒例企画は、ベトナムやイラク、ハンガリー、モンゴルなど毎回ひとつの国や地域を取り上げ、現状や暮らしを専門家や出身者から学ぼうというものだ。ほかに「日本酒ソムリエを招いて」「ハワイアン&フラダンスの夕べ」「津軽三味線と津軽の風景画」「京都の美術館巡り」といった企画を毎月1本程度実施する。
人脈や地縁を頼り、なるべくお金を掛けずにと心がけている。
会は2000年に発足した。ふだんパソコンを使っていた女性が、「パソコンなんて不要」と言う知人に対して「メールぐらいできないと社会から取り残される」と説得するなかで、「人とつながれる場を」「年を取っても趣味や学びを続けたい」と会を立ち上げた。主要メンバーは当時50代だった。
メンバーが口コミで増える一方で、社会は予想を超えたスピードで高齢化が進んだ。「老後の問題に真剣に向き合わないと大変なことになる」とメンバーは危機感を抱いた。
12年度に高齢者施設を見学するバスツアーや、高齢者施設に詳しい建築家を招いた勉強会、介護の専門家を囲んだ意見交換会を催した。
その後も会員ら対象のアンケート結果をもとに、放談会「年を重ねて今考えること」、談話会「高齢期生活の工夫」、ファッションアドバイザーの実演「大津で見つけたおしゃれなシニア」、「介護予防サポーター養成講座」「誤嚥(ごえん)予防について」などを次々と企画している。
「超高齢化社会では、行政や若い世代を当てにできない。意識改革しないと自立して生活できない。そのための学びが求められている」と佐藤さんは言う。
今後、「終末期の心の持ち方」「遺言の書き方」も企画したいという。会の活動を続け、支え合える高齢者共同住宅(シェアハウス)を設ける。そんな夢も膨らませている。
リュエルしなやかは水~土曜日の午前11時~午後4時に開いている。問い合わせは会(077・558・7233)へ。
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滋賀:朝日新聞デジタル 2025-06-11 [
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