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友人の支えが力に 事件の教訓伝える 池田小事件で娘失った父親

 児童8人が殺害され、15人が重軽傷を負った大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)の児童殺傷事件から、8日で24年になった。事件で娘を亡くした父親は、友人の気遣いに前を向く力をもらった。
 事件が起きた午前10時過ぎ、本郷紀宏さん(60)=大阪府在住=は追悼式典には参加せず、校舎の中にいた。
 長女の優希さん(当時7)を事件で失った。襲われた場所から、倒れていた廊下までゆっくり歩く。「そばにいるよ」と心の中で娘に思いを寄せた。
 事件の後は、喪失感で、何も考えられなかった。そんな時、大学時代の友人らが「みんなで集まるからどうや?」と声をかけてくれた。
 そういう気分になれないと断っても、また誘ってくれた。「顔を出してみようか」。そう思えるまで、年単位の時間が必要だった。
 一緒に酒を飲み、部活動の思い出話に花を咲かせた。特別な言葉はなくても、自分を見守ってくれる人がいる。そう思うだけで、心地よかった。
 友人らが「自分たちが本郷を絶対に支えよう」と何度も話し合っていたことは、後になって知った。
 還暦を迎えた今も定期的に集まり、近況を語り合う。休日に一緒に登山し、旅行に出かけることも。山頂から景色を見たとき、「きれいだね」「楽しいね」と心の中で優希さんに声をかける。
 支えてくれる友人の存在は、15年以上続けるボクシングと同じく、「酸素マスク」のようなものだという。「ないとしんどくなる。気分を持ち直す力を与えてくれる」
 事件の教訓や学校の安全を伝えるため、講演を続けている。優希さんとの思い出や亡くなった状況も詳しく語る。
 当時の記憶がよみがえり、講演の後はぐったりして動けなくなる。それでも、自分の体験を伝え続ける。「聴いた人の気持ちに訴えかけ、学校の安全について意識や行動を変えてほしい」

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大阪:朝日新聞デジタル 2025-06-11 [Edit / 編集]

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