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「笑って元気に」月亭方正さんの原点 池田小事件遺族が企画の落語会

 大切な人を亡くした人を支える「グリーフケア」と、笑いで心を和らげる落語を組み合わせた催しが9日、大阪市内で開かれた。
 企画したのは、大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件で長女の優希(ゆき)さん(当時7)を亡くした本郷由美子さん(59)=東京都在住。25人の参加者が、落語家の月亭方正さん(57)の話芸を楽しんだ後、心の内を語り合った。
 本郷さんは自らグリーフケアを学び、悲しみに向き合い、前を向いて生きるために笑いが必要だと知ったという。2022年からはなし家の立川談慶(だんけい)さんと都内で落語会を開くようになり、昨年からは方正さんと大阪での催しにも取り組む。
 今年の催しは大阪市東淀川区の崇禅寺で開かれた。
 本郷さんは参加者に、優希さんを失った後は笑うことに罪悪感があり、安心して笑える場所がほしいと思ったという経験を伝え、「落語は昔から人間の弱さを笑いで包み、庶民の悲しみを癒やしてきた。今日は気持ちを緩めて聞いてください」と語りかけた。
 高座に上がった方正さんはマクラで、芸人としての苦労や、40歳で落語家というやりたいことが見つかった経験を話した後、古典落語の「笠碁(かさご)」を披露。碁の「待った」を巡って大げんかした2人が、互いに寂しくなって、もう一度碁を打って仲直りする話を感情たっぷりに表現し、何度も笑いを呼んだ。
 落語の後は参加者全員で車座になり、感想や思いを語り合った。身近な人を失った人もいて、涙を流しながら自身の経験を話していた。
 目を赤くし、その話に耳を傾けていた方正さん。高座からはひとり一人の顔がよく見え、落語の途中にふと下を向いた人が、「大切な人を思い出しているのでは」と感じたという。「笑うことで元気になってもらう。それが自分の仕事の原点。これからも続けたい」と話した。

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大阪:朝日新聞デジタル 2025-06-12 [Edit / 編集]

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