関東大震災の復興作物、足柄茶100周年 粉末茶入り加工商品も好評
神奈川県産の茶を総称する「足柄茶」が今年、100周年を迎えた。関東大震災の復興作物として、1925年に現在の山北町で栽培が始まり、今では県西部を中心に12市町村で作られている。節目の年に、より広く知ってもらおうと、各地でPRイベントなどが繰り広げられている。
県内有数の産地である秦野市では10日、地元の茶農家で市農協果樹部会茶業部長を務める山口勇さん(67)らが市役所を訪れ、来庁した人たちに新茶を配って試飲してもらった。
山口さんによると、足柄茶は味と香りのバランスの良さが特徴。今年は暖かい日が続いた影響で、出足の収穫量は2割ほど減っているものの、品質は近年にないほど良いという。
市内では、最盛期の85年ごろに50戸ほどあった茶農家が半分以下に減り、高齢化と後継者不足が課題となっている。ペットボトル飲料の普及で茶葉の需要も減る中、山口さんらは茶葉の粉末を使った加工品の開発にも取り組んでいる。
昨今の世界的な抹茶ブームに負けないようにと、地元業者とタッグを組んで、粉末茶入りの団子やそば、ようかんなどを製造。すでにJA直売所で販売している団子は、好評という。「マカロンなど新たな商品にも挑戦していきたい」と山口さん。
試飲会に先立ち、山口さんらから新茶を受け取った高橋昌和市長は「お茶は秦野の主要産物。これからも良いものを作っていただきたい」と激励した。市は5月に中学校の給食で茶を使った献立を提供するなど、普及に力を入れている。
県内のスーパーなどでは隣接する静岡県産のほか、鹿児島県産などの茶が目につく。足柄茶の普及には、人口の多い横浜、川崎をはじめとした県内の消費拡大がポイントになる。
県と県茶業振興協議会は100周年にあわせて、さまざまなイベントを企画。県のPRキャラクター「かながわキンタロウ」が記念大使に就任し、これまでに県農業技術センターの施設公開や茶摘みイベント、県内JA直売所の一斉キャンペーンなどを実施。年明けには100周年記念式典も予定している。
県の担当者は「かながわブランドに登録されている足柄茶のPRを、生産者や関係者とともに進めていきたい」という。
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神奈川:朝日新聞デジタル 2025-06-12 [
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