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石綿被害「クボタショック」20年 95歳になった公害研究者の思い

 クボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の労働者や周辺住民へのアスベスト(石綿)による健康被害が明らかになった「クボタショック」から、6月で20年。
 公害研究の第一人者で大阪市立大名誉教授の宮本憲一さんが14日、「終わりなきアスベスト災害」というテーマで講演する。
 宮本さんは今年2月で95歳。主催する「アスベスト患者と家族の会 連絡会」からの講演の依頼を、快く引き受けた。
 宮本さんは京都市在住。1930年2月、台湾・台北市に生まれた。名古屋大卒業後、大阪市立大や立命館大などの教授を歴任し、2001年から3年間、滋賀大学長を務めた。
 環境経済学などを専門分野として、各地の公害問題を研究してきた。著書の「戦後日本公害史論」が、「戦後日本公害史の研究水準を飛躍的に高めた画期的な業績」と評価され、16年に日本学士院賞を受賞した。
 宮本さんは1985年にアスベスト災害の深刻さを指摘する論文を発表していたが、現地調査に入ったのは「クボタショック」の後だった。
 「いろいろな公害環境問題に追われてしまったもので、私にとっては、今から思えば痛恨の極み」と2018年の講座で語っている。
 11年には編者の一人として「終わりなきアスベスト災害」(岩波ブックレット)を出版。25年1月、神戸市でのシンポジウムに参加して「今世紀の終わりまで被害は続く」と警告している。
 同連絡会の古川和子さんは「患者も家族も高齢化で年々減っている。広くアスベスト問題に関心を持ってもらえたらと、20年の節目に尊敬する宮本先生に講演をお願いした」と話す。
 宮本さんは快諾し、「講演時間は2時間もあれば」と応じたが、90分間でお願いしたという。
 講演会は14日午後1時から、堺市中区のベルランド総合病院で。宮本さんの講演のほか、同病院の岡部和倫・呼吸器外科部長が「アスベストと胸膜中皮腫」、尼崎労働者安全衛生センターの飯田浩事務局長が「深刻な尼崎のアスベスト被害」のテーマで講演。講演に先立って正午から、映像ディレクターの野崎朋未さんがアスベストの被害者らを取材し、「クボタショック」発覚のきっかけになった映像「いのちの軌跡」を上映する。
 参加無料。問い合わせは同連絡会西日本支部(050・3592・3903、renrakukai2@gmail.com)。

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大阪:朝日新聞デジタル 2025-06-12 [Edit / 編集]

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