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【イラン空爆】報復の連鎖を避けよ

  中東地域は緊迫度が増した。報復の連鎖に陥ってはならない。外交を通じた緊張緩和を模索することが求められる。
 イスラエル軍は、イラン各地の核関連施設を含む軍事施設を空爆した。イランメディアは首都テヘランやウラン濃縮施設がある中部ナタンズなどが攻撃を受け、革命防衛隊トップらが死亡したと報じた。
 イランの最高指導者ハメネイ師が報復を宣言し、無人機で反撃した。イスラエルは特別非常事態を宣言した。米国は一連の攻撃への関与を否定している。
 イラン核開発問題を巡り、米国とイランは今年4月に協議を再開した。イランは平和利用を主張して核兵器保有の意思を否定する。ウラン濃縮の継続と制裁解除を求め、米側はウラン濃縮の完全停止を主張して両者の溝は埋まっていない。
 イスラエルは核開発を進めるイランを安全保障上の最大の脅威と位置付ける。イスラエルのネタニヤフ首相はトランプ米大統領に核施設攻撃を繰り返し求めていたとされる。トランプ氏は反対し、核協議での合意を優先する姿勢だと伝えられた。
 ただ、トランプ氏は近く予定された協議での合意には否定的な見方を示していた。ネタニヤフ氏は、交渉の進展を待てばイランに開発の時間を与えると判断し、武力での脅威排除へと動いたとみられる。だが、核施設への攻撃は容認できない。
 トランプ氏は攻撃前に、近く軍事作戦があり得るとの認識を示し、イランに米側の要求を受け入れるよう迫っていた。イスラエルの実力行使で米イラン高官協議は見通せなくなったが、継続が重要だ。
 2023年10月に始まったパレスチナ自治区ガザでの戦闘以降、中東情勢は緊張が続く。
 イスラエルをパレスチナの占領者と位置付けるイランは、イスラム組織ハマスを支援する。イスラエルは中東の親イラン勢力を攻撃するなど、イランとの対立は先鋭化した。昨年は互いの軍事施設を直接攻撃している。
 イランは強力な対抗措置をとれば米側が乗り出し、体制維持に影響しかねないと警戒していたとされる。しかし、核関連施設への攻撃は全面衝突に発展しかねず、緊張が一気に高まる。ネタニヤフ氏は脅威を排除するまで軍事作戦を継続する考えを示す。双方の自制が求められる。
 ガザの停戦交渉は進まず、人的被害が膨らんでいる。人道危機は深刻化し、イスラエルへの国際的な圧力が強まる。イラン攻撃は、イスラエル国内でも高まる批判をかわすためとの指摘がある。
 後ろ盾の米国との関係もぎくしゃくしている。トランプ氏はネタニヤフ氏にガザの戦闘終結を求めたようだが、応じる気配はない。米国は安定化へ関与を強める必要がある。
 原油の大半を頼る中東の情勢悪化は、日本のエネルギー安全保障にも関係する。事態の深刻化が危惧される。対立を強めないように働きかけることが求められる。

高知新聞 2025-06-14 [Edit / 編集]

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