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悩む就活学生ら集うイベント、「自分らしさ」って何?

 「〝自分らしさ〟って、何回ググっても、やっぱり載ってない」。就職活動中の学生や若手社会人を対象に、そんなタイトルの就活イベントが滋賀県東近江市の山里であった。参加者はお茶を摘んだり、たき火を囲んだりした。どんな思いで参加したのだろう――。
 スギやヒノキの緑が重なり、清流がザワザワと音を立てる河原で、若者たちが火を囲んで語り合っていた。夕刻が迫るなか、ゆったりとした時間が流れた。
 大津市で学生のフリースペース「就活room tugumi」を運営する会社「リバース」が7日、東近江市奥永源寺地区でおこなったプログラム。大学生と大学院生の4人、社会人2人が参加し、地元の幻のお茶と言われる「政所茶(まんどころちゃ)」を午前中摘んだあと、バーベキューを楽しみ、お茶を大鍋で煎って味わった。
 リバースの竹林竜一代表(48)のほか、地域活動に熱心な2人がサポートした。
 竹林さんによれば、最近の学生は就活で選ばれるための自己演出が強く働き、「自分らしさがわからない」と悩むケースが増えているという。
 「どう見られるか」ではなく、「どう在りたいか」が大切と考えた竹林さん。自然体験や緩やかな人間関係を通して、若い世代が「わからないままでいい」と自己肯定し、自分にゆっくりと向き合える時間や場所を用意したという。
 参加者の一人、東京都在住の木村こころさん(25)はオランダの大学院で現代アートを学び、昨年4月にアート関係の事務所に就職した。毎日、仕事のやり方などで迷い、独立したい気持ちもあり、自分は何をしたいのかわからなくなるという。
 就職試験の時も、自分がしたいことより、受ける会社が何を求めているかを忖度(そんたく)して応募書類を書いていた。他人から良く見られたい、周りに負けたくない一心だった。だが試験は次々と落ちた。自分の核がどんどんなくなっていくようで落ち込んだという。
 今回のイベントについて「良い意味の逃げ場になると思った。自分を取り戻せる場にしたい」と言った。
 大津市の成安造形大学4回生、村山晃生さん(21)は就活中だ。イラストを描くのが好きで印刷会社を希望している。だがパソコンで会社の情報を集め、スーツを着て説明会に参加することを繰り返す就活に息切れしてきた。
 今回は「視野を広げたい」と参加した。ふだんは友達と話せないような生き方にかかわる真面目な話も交わせると期待した。
 「肉が食べたくて参加しました」と自己紹介してみんなを笑わせた福岡市育ちの印出夏海さん(22)は草津市の立命館大学5回生。活発で明るいタイプに見えるが、4回生の時に学内でのコミュニケーションがうまくいかず部屋に引きこもっていたという。卒業論文を出せずに留年した。
 「置いてきぼり感があって情けない。自分を責めてばかりいます」。就職の内定を得ているが参加した。仲間と接することで、日常での思い込みから離れることができたという。
 広島市出身の山本未歩さん(25)は今月末に三重県のベンチャー会社を退職予定だ。「自分が大切にしたいことは何か」をはっきりさせたくて参加したという。
 大学時代はコロナ禍で親しい仲間ができず、就職しても地域になじめなかった。「一人が長過ぎて人としゃべるのが怖い」と言っていたが、この日は積極的に会話を交わした。
 イベント後、参加者は「楽しかった」と口をそろえた。生き方のヒントをつかめたのかもしれない。

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滋賀:朝日新聞デジタル 2025-06-19 [Edit / 編集]

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