横浜の森の間伐材でバイオリン 中学時代に自作 21日に演奏披露
【神奈川】横浜市緑区の森で伐採された木材でバイオリンを製作した男子高校生が、21日にその森に隣接する公園で自作の楽器による演奏を披露する。中学校時代に挑戦し、約1年半かけて卒業間際に完成させた。「楽器や音楽を通して、人間が自然と共生する意味を考えた」とし、当日、弾くことでその思いを伝えたいと話している。
シュタイナー学園高等部の2年生、伊藤風人(ふうと)さん(16)。小学4年生からバイオリンを習っている。当時、横浜市都筑区の自宅から通っていた横浜シュタイナー学園でさまざま楽器に触れてみて、美しい音色が気に入った。
中学2年のとき、バイオリン製作と修復の第一人者、中沢宗幸さんが書いた本「いのちのヴァイオリン」を読み、自分でも作ってみたいと思った。
同じ学園に子どもが通っていた小山哲哉さん(52)が、高校時代に独学でバイオリンを作った経験者だと知り、相談してみると支援を快諾してくれた。
小山さんは、横浜市緑区の「新治市民の森」で保全活動などをする「愛護会」の会員で、会が10年以上乾燥させた間伐材や工房の電動工具を提供してくれることになった。ノミやカンナのほか、特殊な工具も小山さんが貸してくれた。
学園には、中学3年の1年をかけた研究などの成果を発表する「卒業プロジェクト」があり、伊藤さんは2年の秋から取り組み始めた。
「木工は苦手で、勢いだけだった。あんなに大変とは思わなかった」
最初は小山さんにつきっきりで作業を教わった。表板と裏板を切り出し、ノミで削ったあと、豆カンナでさらに薄くなめらかにしていった。側板は、母親の古いヘアアイロンを作業台に固定し、水に浸した板材を押しつけて少しずつ曲げ、型に沿う形にした。指板(しばん)やあご当て、糸巻き(ペグ)などは市販品を使った。
「間違って表板の内側を切ったり、インフルエンザで寝込んだり、何度も『終わった』とあきらめかけた。家族や小山さん、多くの人に助けられました」と振り返る。
ボディー部分の完成は発表会の1週間前。最後は徹夜で作業し、発表前日の午後11時前に弦を張り終えた。
発表会には小山さんも来て、「よくやったね」と言葉をかけてくれた。ニスの塗装は間に合わず、白木の楽器での演奏だったが、「自分らしい素朴な音だな」と思いながら弾いたという。
昨年5月、市民の森でミニ演奏会があり、愛護会などの関係者の前でモンティの「チャルダッシュ」などを披露した。
「森で育った木で人間が楽器を作り、心を豊かにしてくれる音楽を楽しむのは一つの循環。現代社会で、人と自然が共存する一つのあり方だと思う」
21日は午後5時から、市民の森に隣接する「にいはる里山交流センター」で、初めて一般の人向けに仲間たちと演奏を披露する。「夏至トワイライトガーデン」という催しで、サックスやハープの一種「アルパ」の演奏もある。問い合わせはセンター(045・931・4947)へ。
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神奈川:朝日新聞デジタル 2025-06-19 [
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