農福連携、引きこもりや出所者へも対象拡大 中間者の重要性高まる
農業現場での人手不足解消と、障がいを抱えた人たちの就労や社会参画推進が期待出来る「農福連携」。15年ほど前から取り組みが始まり、青森県は昨年度から、対象分野を拡大した「ユニバーサル農業」の推進を掲げている。このほど人材育成などを目的とした研修会が青森市内で開かれた。
青森県の「農福連携」は2011年度にスタートした。
昨年度からは「新たなステージ」として、「農」の部分を林業や水産業にも拡大。「福」でも、障がい者だけでなく、引きこもりといった今の社会で生きづらさを感じている人、高齢者、刑期を終え出所した人らへと対象を広げている。
研修会は、スムーズな農福連携実現のカギとなるコーディネーター(中間支援者)の役割や重要性に着目。先進地である佐賀県から同県農福連携コーディネーターの藤戸小百合さんを講師として招いた。
藤戸さんは「農と福は常に対等で、連携はツール。『WIN―WIN』ではなく、どちらも良かったという『HAPPY―HAPPY』の関係が大事」と強調。農福連携の動きが広がり好循環を生むには、「双方への理解がある中立な中間支援者の存在が不可欠だ」と話した。
また、「休憩所やトイレをどうするかの対応一つで農家さんの本気度がわかります。福祉側から『また行きたい』と選ばれることが大切」とし、失敗事例としては、農側は「何もできない障がい者になんでお金を払わなければいけないんだという理解不足」や「安価な労働力としての利用」といった問題、福側には「(急なキャンセルで)予定日に作業が出来なかった」といった問題を挙げた。このほか、「農作業をしたことがない支援員が担当し、作業中の休憩時間確保を忘れた」といった中間支援者に起因する問題も指摘した。
藤戸さんによると、佐賀県では、農福連携コーディネーターを配置し全県域でのマッチング支援を行った結果、連携に取り組む農家数が4年で約4倍に増えたことや、作業者1人あたりの時給もほぼ倍になったことも紹介した。
研修会では、上北エリアで農福のマッチングに取り組んでいる東北町の会社「レイズ」の長畑幸治社長によるポータルサイトを使った事例紹介もあり、参加者同士による情報交換も盛んに行われていた。
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青森:朝日新聞デジタル 2025-06-19 [
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