人と自然、調和し響く野外彫刻 奈良県十津川村、ドイツ出身彫刻家ら制作「ONKAI」 あす6月21日からオープニングイベント
三重、和歌山に接する奈良最南端の集落、十津川村竹筒(たけとう)地区に珍しい野外彫刻が生まれた。その名は「ONKAI(音階)」。地域の活性化を願い、社会と自然の融合を考慮して造られた作品は21、22日のオープニングイベント(実行委員会主催)で披露される。
ドイツ出身の音響彫刻家ルーカス・キューネさん(57)と北欧エストニアの技術者ら、地元の大前建設が共同で制作。2016年からプロジェクトを進め、24年10月に最終的な仕上げを実施した。
小さな谷地形の棚田に造られ、平面規模は9メートル四方。高さと大きさの異なるコンクリート製の円柱10本が段々状にぐるりと連なり、最も大きなもので高さ約5.4メートルに及ぶ。円柱は日本の雅楽の十二律音階を参考に音の高さが設計され、人の声や歌、楽器や自然などのさまざまな響きを楽しむことができる。
竹筒地区にある竹筒神社で毎日、プロジェクトの無事成功を祈ってきたというルーカスさんは「海外と地元の人々の協力の集大成だ。彫刻がぴったりこの地に合うと感じる。森の神が降りて来ていただけそうな雰囲気」と満足した様子だ。
「ONKAI」は高齢化が進む同村の文化と観光の目玉となり、地元の活発化につながることが目的。ルーカスさんは「訪れてくれる人々に自分の声や体で遊び、自分自身を再発見してみてほしい。皆が交流することでこの地を成長させてもらいたい」と未来へ思いをはせる。
プロジェクトのメンバーとして制作に協力してきた中川真・大阪公立大学特任教授(74)=民族音楽学=は「大きな自然の中に置かれているようなオブジェ。人々が楽しむことで人間の営みの場所ができ、調和的な風景をつくっていくだろう」と述べる。
住民の話し合いで野外彫刻の設置を受け入れた竹筒地区の総代、玉置倬生さん(79)は「過疎の地域に何か光るものができたなと実感している。内部に入ると反響を聴くのが楽しくて気持ちが良く、多くの人に体感してもらえる作品になれば」と期待する。
オープニングイベントでは芸術家のパフォーマンスやマルシェ、資料展などを実施する。午前10時~午後8時開場(22日は午後4時まで)。入場無料。問い合わせは、実行委、電話090(3651)7488。
奈良新聞 2025-06-20 [
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