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女性美術家が築いたフランスとの交流の歴史知って 女子美で記念展

 女子美術大学美術館女子美アートミュージアム(相模原市南区)で、女子美術大学創立125周年記念展「女子美とフランス――もうひとつの日仏交流史」が開かれている。三岸節子ら渡仏した女子美出身の美術家たちの系譜や作品を紹介し、日仏間の美術交流の歴史をつくった女性美術家たちに焦点を当てた。
 企画を担当した三谷理華・女子美大美術館長(教授、西洋近代美術史)が注目したのは、東京芸大の前身、東京美術学校の教授となった黒田清輝(1866~1924)、岡田三郎助(1869~1939)が学んだフランスの画家ラファエル・コラン(1850~1916)だ。自宅に画塾をつくり、女子の美術教育に取り組んでいた。
 三谷館長は「岡田はコラン家に下宿し、つきあいが深い。恩師の画塾は当然見聞していた」と説明する。帰国後、岡田は女子美の前身の女子美術学校で教えつつ、自宅そばに女性向け画塾を設立、女子の美術教育に力を注いだ。「女子美の美術教育史の源流をたどるうえで、コランは重要な人物の一人」と指摘する。
 フランスではすでに忘れられた存在だったコランの作品「ヤブイチゲ」ほか、三谷館長がゆかりの地を訪れて収集したデスマスクやカップホルダー、レッスンの写真などの資料も見せる。
 岡田の教え子の中に、女子美でも学んだ森田元子(1903~69)と三岸節子(1905~99)がいた。ともにフランスに滞在し、当時の前衛的な創作に影響を受けたという。
 展覧会では戦前に渡仏した森田や、戦後長く滞在した三岸の作品、その後に渡仏した岡田節子、桜井悦らの作品を展示している。
 女子美は創立100周年の2000年に「女子美パリ賞」を創設し、海外の芸術家を受け入れるパリの施設「国際芸術都市」に卒業生や院生らを毎年1人派遣してきた。21世紀の日仏美術交流を担う、パリ賞受賞者の作品も紹介している。
 三谷館長は「日本の近代美術史で、フランスとの交流と言われると、黒田、岡田のあとも、佐伯祐三や藤田嗣治ら、男性画家ばかりが脚光を浴びてきた。女子美ゆかりの女性美術家が築いたもう一つの日仏交流の歴史を知ってもらえたら」と開催への思いを語った。
 会期は8月5日まで、入場無料。6月21日には貝塚健・千葉県立美術館長による講演「女子美をつくった横井玉子と佐藤志津――浅井忠から見えてくる風景」、7月5日午後2時、21日午前11時30分からギャラリートークがある。日曜祝日休館(7月20~21日を除く)。

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神奈川:朝日新聞デジタル 2025-06-21 [Edit / 編集]

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