ハンセン病の強制隔離「再びしないで」 長島愛生園の入所者自治会長
ハンセン病の回復者が暮らす国立療養所「長島愛生園」(岡山県瀬戸内市)の入所者自治会長、中尾伸治さん(90)が22日、岡山市内で「長島で80年、今 思うこと」と題して講演した。中尾さんは生い立ちや園内での日々などを語り、いまなお偏見が残っていることも話した。
この日は「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」。ハンセン病は戦後、特効薬の普及で治る病気になったが、らい予防法が廃止される1996年まで国は強制隔離政策を続けた。
会場の「詩人永瀬清子とハンセン病文学の読書室」(同市北区表町3丁目)では約30人が中尾さんの話に耳を傾けた。
奈良県出身で、母と兄と暮らしていた中尾さんは13歳で入所。当初、夜になると家族を思い出し、寂しさがこみ上げたと回想した。野球チームに入ったり、牛の世話をしたりと、当時の園内での生活状況も語った。
一方、昭和30年代に園外に出た際、差別的な言葉を投げかけられたことや、いまも偏見に満ちた発言を聞くことがあることも明かした。
コロナ禍で感染者が標的になった状況を目の当たりにして、「(世の中は)変わらないなと。自分たちがやってきたことが何にもなっていない」と残念がった。「再びこのようなこと(終生隔離)をしてほしくない」とも話した。
中尾さんは自身の経験を学校で語る活動もしており、「子どもたちには、差別しない社会をつくってほしいと伝えている」と語った。
講演を聴いた大学教員の林美帆さん(50)は「(園内の)生活のいったんを聞かせてもらい、本当に貴重だった」などと話した。
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。
今すぐ登録(1カ月間無料)ログインする※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません
岡山:朝日新聞デジタル 2025-06-23 [
Edit / 編集]