詠めるほどすっかり定着ヌートリア 厄介者でも姿かわいく
春の日の土手に集まるヌートリア嫌われ者も姿愛らし――。特定外来生物のヌートリアを詠んだ短歌や俳句が、朝日新聞岡山版の歌壇や俳壇に載ることがある。稲などを食べる厄介者ではあるが、どことなくかわいげもある。県内ではしっかりと定着しているようだ。
どれだけ詠まれているのか。データベースで「ヌートリア」と検索すると、岡山版の歌壇などで8件。県外では京都5、広島3、岐阜2、島根1。岡山はダントツで1位だった。
ヌートリアは草食性で、稲や野菜を食い荒らすため有害鳥獣に指定され、県が毎年実施している獣害対策のための集落アンケートの対象にも。イノシシ、ニホンジカ、ニホンザルとともに、目撃頻度や農林業への被害の大きさや被害内容などが調査されている。
全市町村で確認 県鳥獣害対策室によると、昨年度は回答のあった集落のうち7割近くが「生息している」とし、全ての市町村でヌートリアが確認された。また被害が「深刻」「大きい」と、甚大化したとする回答が1割を超えていた。2023年度の捕獲数は約2800匹。ここ数年、2千匹後半~3千匹あまりで推移しているという。
県内ではいつごろから、ヌートリアが定着しているのだろうか。
ヌートリアの生態や歴史に詳しい岡山理科大の小林秀司教授(62)は「岡山県は、ヌートリアの生息数が全国で最も多い地域。1950年ごろには児島湾周辺で野生化しているのが確認されている」と話す。
国内のヌートリアは、1939年に海外から輸入された150匹に由来している。当時、毛皮が防寒に役立つとされ、各地で飼育されていたという。ただ県内では戦時中、ヌートリアの飼育を規制する県の通達が出され、そのとき放たれたヌートリアが児島湾付近に定着したのでは、と小林教授は推測している。
昔は救世主 一方、戦後の食糧難の時代、ヌートリアは救荒動物としてもてはやされ、国家プロジェクトとして増産が奨励されたという。しかしその後、プロジェクトは消滅し、そのまま野に放たれる。現在、各地で目撃されるヌートリアは、このときの子孫だと小林教授はみている。
「ヌートリアはおとなしく、頭もいい。少なくとも岡山では農業被害が中心なので、たとえばヌートリアが田に入りにくいように通り道に障害物を置いたり、下を掘っても入ってこられないような柵を作ったりするだけで、田への侵入をあきらめることが多い。岡山ではすでに生態系の一員になっている可能性が高いので、根絶はとても難しいだろう」
ヌートリアを詠んだ岡山歌壇…
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岡山:朝日新聞デジタル 2025-06-25 [
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