夫婦2人だけの劇団、「父と暮せば」上演 芝居を通じて戦争語り継ぐ
島根県飯南町に暮らす元高校教諭の夫妻が2人だけの劇団を立ち上げ、広島で被爆した父娘を演じる2人芝居「父と暮(くら)せば」(井上ひさし作)の上演を始めた。戦後80年企画として、戦争の記憶を次の世代に伝えようとする活動だ。今後、8月初旬まで県内と広島市で5回の上演を予定している。
一昨年9月に飯南町に移住した伊三野(いさの)友章さん(62)と十鳥(じゅうとり)美代子さん(36)夫妻はともに大阪府出身。2人はかつて千葉県の高校に勤務し、伊三野さんは国語を、十鳥さんは美術を教えていた。
伊三野さんは高校教諭時代の三十数年間、演劇部の顧問をし、太平洋戦争や東日本大震災、不登校などの社会問題をテーマにした劇を指導してきた。
飯南町に移住後も演劇への情熱や社会への関心は衰えず、昨年はイスラエルの軍事作戦が続くパレスチナ自治区ガザの人たちの声を集めた独白集「ガザ・モノローグ」の朗読会のほか、演劇部顧問の時にも取り組んだ「父と暮せば」の朗読劇も企画。十鳥さんと「今年は演劇をやりたいね」と話していたという。
「父と暮せば」は、原爆投下から3年後の広島が舞台。好意を寄せてくれる青年が現れたが自分だけ幸せになっていいのかと葛藤する娘の美津江と、恋の応援団長役を買って出る父の竹造。ともに被爆した娘と父の本音のやりとりが見どころだ。上演時間は約90分。音響と照明はパソコンを活用し、演じながら操作する。
2カ月ほど前、2人で「劇団十三夜」を立ち上げ、練習を開始。6月22日に松江市の矢田公会堂で初披露した。伊三野さんは「戦争を知らない世代が戦争の記憶を語り継ぐ時代に入っている」とし、「震災や戦争をテーマにした演劇は、それ自体が語り継ぐということ。『父と暮せば』はまさに語り継ぐがテーマ。この作品を演じることで記憶継承の一端を担うことができれば」。十鳥さんも「美津江を演じながら、美津江が経験した戦争を感じている。舞台を見てくれる人に戦争経験が伝わればうれしい」と話す。
今後の上演予定は、7月12日午後2時から交流拠点「谷笑楽校(しょうがっこう)」(飯南町)▽同19日午後6時半からカフェ&ギャラリー「鐘や」(同)▽8月3日午後3時からフリースペース「CINEMATOLIFE」(島根県出雲市)▽同9日の午後2時と6時からイベントスペース「ふらんす座」(広島市)。いずれも入場無料(8月9日のみワンドリンクオーダー制)。問い合わせはメール(isano@mac.com)で。
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島根:朝日新聞デジタル 2025-06-27 [
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