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練習後の日課は田んぼの水張り 亡くなった祖父の後継ぐ高校球児

二刀流でいこう! 【野球×農業】 名久井農(青森)長根快人さん 名久井農(青森県)二塁手の長根快人さん(3年)は、練習が終わった後に「日課」がある。
 自転車で田んぼに向かい、水の量を確認する。ポンプを起動させ、貯水槽から水を張る。
 今年から本格的に農業を継いだ。家は100年ほど続く、稲作と果樹の兼業農家。田んぼの広さは20アール、果樹はリンゴを中心に50本ほどある。果樹への農薬散布は月3回で平日の朝5時から行う。「大変だけど、農業が好きなので楽しいです」。
2万人に1人の難病、8度の手術、担当医師は父親 叶えた野球部の夢 おじいちゃん子だった。2歳のころから祖父の豊さんと一緒にトラクターに乗っていた。小学生になると田植えの手伝いをするようになった。「じいちゃんが、かっこよかったんです」。
 その豊さんが昨年、71歳で亡くなった。父親は看護師で農業経験がない。そこで、高校生ながら、後を継ぐことになった。
 そもそも、名久井農に進んだのは農業をしたかったから。高校の進学先を選ぶ際、将来何がやりたいのかを考えたら、答えは目の前にあった。「この家が好き。この農家が好き。この田舎が大好き」。だから、豊さんの死で農業を継ぐのは必然。親に反対されても、譲らなかった。
 とはいえ、農業は素人に近い。果樹の剪定(せんてい)士を呼んで、一緒に作業した。分からないことがあれば、祖母や親戚、近所の人、学校の先生ら、いろんな人に話を聞く。トラクターなど農業機械の操作方法はYouTubeを見ながら学んだ。
 悔いがある。豊さんに農業のことを全く聞けなかったことだ。どういう時にどういう作業が必要なのか。「細かい話をしながら、2人で農作業をしたかった」と思う。
 日本は農家の高齢化が進んでいる。若い人のなり手が、なかなかいない。長根さんは農業高校だが、「クラスにも継ごうという人は2、3人しかいない」と言う。
 そこで、クラスメートに稲作を経験してほしいと、「名農米プロジェクト」という企画を立ち上げ、ホームルームで発表した。希望者が一緒に稲作をするというもの。10人ほどが集まり、田植えもした。
 農業と野球の両立。長根さんにその相乗効果について聞いてみた。
 「大変だけど、野球でうまくいかないときに、農作業をすることでリフレッシュできます」
 野球は小学校4年生から始めたが、好きになったのは高校から。同学年の部員がいなかったが、「やりきった時の達成感」に引きつけられた。今春の時点では部員7人だったが、長根さんの呼びかけでクラスメート2人が加わり、夏は単独チームで参加することになった。目標は「1勝」。高校野球引退後には、稲刈りが待っている。

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青森:朝日新聞デジタル 2025-06-28 [Edit / 編集]

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