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中泊町博物館、36年ぶりに学芸員を採用 弘前出身の宗像萌子さん

 36年ぶりとなる青森県の中泊町博物館の学芸員に、弘前市生まれの宗像萌子さん(22)が新卒で採用された。同町の宮越家には、100年前のステンドグラスの傑作をはじめ、大英博物館所蔵の作品と対をなす狩野派のふすま絵、京都風の庭園など、貴重な文化財が数多くあり、内外の注目を集める。
 資料整理や展示企画を担ってきた斎藤淳館長(58)と2人態勢になり、やがては後継者にとの期待が強い。「子どもたちに自分の町をより好きになってもらえるよう、一生懸命に勉強して知識を充実させ、まずは宮越家文化財の魅力を存分に伝えられるようにがんばりたい」と、しっかり前を向いている。
 昨年3月、町が学芸員の募集を公表したことを知ると、すぐさま応募した。36年前に旧中里町の学芸員になった斎藤館長は、6年後には職を離れる予定で、今から後継の学芸員を育てたいというのが町の募集事情だ。北海道から福岡県まで21人の応募があった。書類審査などを経て残った13人の中から選ばれた。7月の最終面接で浜舘豊光町長から「どういうことを大事にすれば良いと思いますか」と問われ、「公に登録された文化財だけでなく、町民の歴史や祭りなどの民俗的な部分も記録したい」と答えた。
 青森県の行政職募集にも1次試験は通っていたが、「どうしても学芸員をやりたくて」中泊町に決めた。内定を受けてほどなく、宮越家のふすま絵「春景花鳥図」と大英博物館所蔵のものは、400年前の狩野派の作で、対をなすと公表された。津軽半島とロンドンとのつながりに驚き、「職場は、国際的な舞台でもあるのだ」と感じ入った。
 弘前大学人文社会科学部で考古学を学んだ。4年次の研究テーマは「江戸時代の墓碑」。市内の寺に4カ月間通った。256基の墓の大きさを測り、写真に収めて、年代ごとの形式や、何年に亡くなった人が多いかなどをデータベース化してまとめた。学芸員の資格は、在学中に取った。指導教官だった関根達人教授は「とても研究熱心で、優秀な学生でした。中泊町博物館は、宗像さんにとってふさわしい職場。地元の人との交流を大事にしてほしい」と喜ぶ。
 「36年ぶりの採用というのを辞令交付式の時に聞いて、大変な重圧感を感じました」
 仕事に就いて3カ月弱。学芸員の仕事は多岐にわたる。博物館のカウンター業務をはじめ、寄贈・借用資料の登録整理、戦後80年企画展の準備などに忙しい。町内にある元禄時代の墓など考古資料の確認にも回った。空き時間は宮越家に通う。「庭園が好きです」と清掃活動に加わった。一般公開の見学者を迎え、ボランティアガイドの説明に、一緒になって耳を傾けることもある。
 「町民の皆さんが博物館にきて、じかにお話をするときにも、まだ緊張します。でも、プレッシャーは乗り越えていかなくては、と思っています。宮越家のご当主と初めてお会いした時には『こんなので大丈夫か』と思われたらどうしようと不安でいっぱいでしたが、親しみやすい方でほっとしました」
 斎藤館長は「あらゆる面で素晴らしい働きぶり。宮越家のことは、がんがん携わってもらう」と指導に力が入る。宮越家当主の寛さん(66)も「基礎ができて、きちんと勉強もしている。斎藤館長に任せつつ見守っていきたい」と温かく迎えている。
 周囲からの期待を集める新人学芸員は「宮越家では、更なる発見がありそう。今後の調査研究が重要になると思います」。

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青森:朝日新聞デジタル 2025-06-28 [Edit / 編集]

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