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1年生のときからずっと部員不足 後輩のために達成したい一つの目標

「2年間の成長」③愛知 宮下剛志選手(第107回全国高校野球選手権滋賀大会の開幕前連載)
 2年前の夏。愛知は、信楽、長浜農と連合を組んで滋賀大会に出場した。
 初戦の相手は草津。チームは1本も安打を打てず、0―11で五回コールド負けした。
 最後の打者になったのが、愛知の宮下剛志選手だった。1年生で唯一のレギュラーだった。
 3年生の次打者につなぎたかったが、三振に倒れて試合終了。ベンチの前に整列し、勝った草津の校歌を聞いた。
 宮下選手は多賀町出身。中学時代に連合チームを経験した。他校の選手ともコミュニケーションを取れるところがよかった。だから、連合チームに対する抵抗はなく、部員不足になっているのは知ったうえで愛知に進んだ。
 実際に、宮下選手がプレーしたこの2年余りの間で、愛知が単独チームで大会に出場したことはなく、部員が2人になる厳しい時期もあった。それでも投げ出すことなく練習に励み、目標を一つ一つ達成していった。
 連合チームは、平日は各校で練習を行い、休日に顔を合わせて連係をたしかめる。「みんながどれだけ平日にがんばってやってきたかわかるから、休日が楽しみだった」と宮下選手。
 昨夏の滋賀大会1回戦では、公式戦初安打を放った。一方、大会後はいっしょに練習をする部員が、1学年下の広瀬晴伝(せいでん)選手だけになった。
 暑い中、2人でノックを受けるのはつらかった。平日は基礎練習しかできず、つまらないと思うこともあった。それでも続けられたのは、野球が好きだからだ。
 公式戦は決まって初戦でコールド負けだった。悲願の公式戦1勝――。それは宮下選手が先輩から託された目標でもあった。
 今春の県大会1回戦。安曇川・湖南農・守山・愛知の4校連合で、膳所に9―5で勝利した。宮下選手と広瀬選手は四球を選び、得点に貢献した。
 念願の初戦突破に、ベンチやスタンドは沸いた。宮下選手も「高校野球をやってきた中で一番喜んだ」と振り返る。
 最後の滋賀大会には、安曇川・湖南農・愛知・長浜農の4校連合で臨む。目標はまず1勝。「もう1回、勝ちを味わいたい」
 目標を一つ一つ達成してきた宮下選手だが、ただ一つ、卒業までに成し遂げられない目標がある。
 それは、愛知が単独チームで出場することだ。いまの1年生は3人。「もっと部員を増やして、単独チームで出られるようにしたい」。唯一の2年生である広瀬選手もそう話す。
 後輩たちには、いつか単独チームで出場してほしい――。宮下選手はそう願っているから、地元の野球チームなどに戻っては、後輩たちに「愛知に来て」と声をかけている。
 愛知では今年度、球速などを計測する弾道測定器「ラプソード」を導入した。高校ではまだ珍しく、部員を増やす一助になれば、という加藤史典監督(34)らの願いも込められている。そのラプソードを活用して、宮下選手らは投球練習をしている。
 忍耐力、コミュニケーション能力、周りを見ることができる視野――。宮下選手が連合チームを通して学んだことはたくさんある。
 「この3年間で精神面も強くなり、周りのことも見えるようになった」と加藤監督。集大成となる「最後の夏」は、4校連合の主将として、成長した姿を見せる。
     ◇
 第107回全国高校野球選手権滋賀大会が7月6日に開幕する。記者は滋賀の高校野球を担当して3年目。2年前の夏に1年生だった選手の「成長」を伝える。

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滋賀:朝日新聞デジタル 2025-06-28 [Edit / 編集]

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