南朝再興を図った自天王の遺品かぶと、春日大社「大鎧展」に出陳 奈良県川上村の外では最初で最後の公開
【7月5日から春日大社国宝殿で】
室町時代、吉野で南朝再興を図ったが暗殺された自天王の遺品として奈良県川上村に伝わるかぶと(国重要文化財)が、7月5日から奈良市春日野町の春日大社国宝殿で開かれる「究極の国宝 大鎧展」に出陳される。同大社と同村が30日、発表した。毎年2月5日の村の伝統行事「御朝拝式」以外では初めての公開となり、村は「村外での公開は最初で最後になる」としている。
【560年途切れることなく続く御朝拝式】
自天王は南朝最後の天皇、後亀山天皇のひ孫。上北山村で南朝再起の機会をうかがったため「北山宮」とも呼ばれる。1457(長禄元)年、襲撃を受けて18歳の若さで最期を遂げたが、川上郷の郷士が自天王の首を取り返し、川上村神之谷の金剛寺境内に手厚く葬ったと伝わる。
御朝拝式は自天王遺品のかぶと、胴、袖を自天王に見立てて、新年朝賀の儀式にならい始められた。560年以上にわたり途切れることなく続けられており、2月5日、金剛寺境内にある宝物庫を開扉してかぶとなどを拝している。
【保存状態の良さに驚き】
かぶとの正式名は「縹糸威筋兜(はなだいとおどしすじかぶと)」。鉢の高さ11・3センチ。青系の伝統色、縹色の糸で小札をつづり、かぶとの前を装飾する「鍬形(くわがた)」はほぼ真っすぐに立ち上がる。室町時代前期に奈良の甲冑(かっちゅう)師が製作したものと考えられている。
国宝殿学芸員の荒井清志春日大社権禰宜(ねぎ)は保存状態の良さに驚いたといい、「恐らく製作当時のものと思われ、川上の人々によって600年近くにわたり大切にされてきたことが分かる」と語った。
【村外にでるのは今回限り】
川上村水源課の吉田志帆副課長は「村外に出るのは今回限り。今後は2月5日の御朝拝式でこれまでと変わらず公開していく」と述べた。一般財団法人かわかみ源流ツーリズムが当日の見学ツアーや、今秋に村の後南朝などの歴史を体感するツアーを企画しているという。
「大鎧展」は7月5日~9月7日に開催。自天王遺品のよろいは7月19~21日と8月28日~9月7日の計14日間公開する。7月19日には春日大社感謝共生の館で、関連の基調講演と座談会がある。午後1時から。参加費1500円。定員150人。春日大社ホームページから事前に申し込む(申し込み先着順)。
奈良新聞 2025-07-01 [
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