2020年7月豪雨から5年 球磨焼酎の酒蔵 新商品に込めた思い【熊本】
2020年7月豪雨から4日で5年。
甚大な被害を受けた人吉市の球磨焼酎の酒蔵大和一酒造元では5年という節目の年にある特別な商品を作りました。『ここに生きる』その意味とは。
球磨焼酎の酒蔵大和一酒造元を経営する下田 文仁代表です。
【下田 文仁 代表】
(もう5年ですね)
「そうですね。振り返るともう5年経つのかと思う」
(また梅雨入りしましたね)
「もう強い雨が降るとすぐに思い出してしまいますね、あの時のことを。気持ち悪くなります」
いつも恵みを与えてくれていた球磨川が、あの日、容赦なく牙をむきました。
明治31年から続く大和一酒造元も約3メートル浸水、丹精込めて作ってきた球磨焼酎はほとんどが流失し見るも無残な姿に変わり果てていました。
あの日から5年、多くの仲間に支えられ復旧した酒蔵ですが、あの日のことを忘れたことはありません。
【下田 文仁 代表】
(これを飾り続けるのはなぜ?)
「戒めです。自分に対する。備えもせず、のんきな生活を送っていたからそういうのに対する戒めとして置いている」
「球磨川の恵みはいっぱい感じる、でも球磨川の脅威を感じる瞬間は1年間にあっても1回2回、もちろん恵みは享受するが恐ろしさも常に心に停めておかないといけないと自分に突きつけるためにも」
たくさんのボランティアの手により大和一酒造元は被災から4カ月後に仕込みを再開、翌年には出荷を始めるなどいまはほぼ被災前の状況に復旧しました。
下田さんは5年の節目を迎えるに当たりある新商品の販売を考えていました。
【下田 文仁 代表】
「これは今漬けてるんですよ。この間漬けたばっかりで。人吉の梅と玄米焼酎で作っている」
豪雨災害のとき、蔵の中にあった27の貯蔵タンクのうち奇跡的に中身が無事だったタンクが2つありました。
その1つは人吉産の梅を球磨焼酎で漬け込んだ梅酒で下田さんは資金調達のために『ここに生きる』という特別な名前を付けてクラウドファンディングの返礼品にしました。
すると全国から支援が殺到、その味も高く評価され再販を求める声が多く、5年の節目に合わせて復活販売を決意したのです。
商品名は今回も同じ。
しかしラベルにはある思いを込めました。
【下田 文仁 代表】
「今年昭和100年じゃないですか。昭和100年の間に起きた災害の年号と日にちを8桁の数字で並べようと」
この100年で日本で起きた様々な災害。
多くの大切な命や、住む家を無くしながらもそこで生きるたくさんの被災者がいます。
実際に東日本大震災の被災地宮城県を訪れたという下田さん。
『本当の復興』とは何か、自分も被災者になりあの日から常にその答えを探し続けてきました。
【下田 文仁 代表】
「災害があっても日本全国の皆さん置かれた場所でひっそりとではあってもちゃんと生き続けて頑張っているので、そういう人たちと思いを一緒にしながら我々も頑張っていきたい。ここに生き続けること自体が意味があるし、復興とはそういうものだよねと思う」
本格的な出荷は、7月下旬からになるということです。
あの日から、4日で5年、下田さんが今一番伝えたいこととは。
【下田 文仁 代表】
「復旧するまでの3年間はものすごく長くて苦しいことって長く感じるんだなと思ったが復旧後はあっという間に過ぎた2年間だったなと思う。街がきれいになり自分の蔵がきれいになると本当にここで水害があったのかなと忘れそうになる。でも例えば
1日で400ミリまた雨が降ればまた3メートル水没する、そういう現実は何も変わっていないのでやはり自然に対する畏怖の気持ち恐れる気持ちは常に持っておかないといけない。私たちは焼酎を作るのが生業なので焼酎を通してそういう私たちの生き方や考え方を世の中に伝えていけたらいいなと思うので、5年目の節目としてもう一回感謝の気持ちをかみしめて再スタートを切りたい」
(きれいですね球磨川って)
「本当ですね、穏やかな時はいいんですが…」<br>
https://www.youtube.com/watch?v=an0c8cAwmpg
TKU テレビ熊本 2025-07-03 [
Edit / 編集]