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日常の仮面を外して楽しむバー 「魔窟」と呼ばれたビルから離れた今

 大阪・ミナミのランドマークで「魔窟」とも呼ばれた味園(みその)ビル(大阪市中央区)。2024年末に2階飲食店街の大半が営業終了し、元キャバレーで地下1階にある貸しホール「ユニバース」も7月5日に閉館予定だ。個性的な店が集まり、独自の文化を醸成したビルが70年の歴史に幕を下ろす。
 「今後、あのようなビルはもう生まれないかも」
 味園ビルでBAR「秘密倶楽部アニマアニムス」を営んだ、店主の宮悪戦車(みやあくせんしゃ)さんはビルの完全閉館を惜しむ。
 11年、当時からバンド活動をしていた宮悪さんは、バンドのコンセプトを継ぐ店を味園ビルに構えた。物件探しをしていたとき、味園ビルが「サブカルの聖地」へと変貌(へんぼう)する先駆けとなったバーが入っていた場所が空いたと情報が入り、即入店を決めたという。
移転後に感じた「味園という場の力」 職場では上司、家に帰れば父親。日々、役割の「仮面」をつけて生きている人たちが、仮面を外して新しい自分を発見する場にしようと、店のコンセプトを決めた。
 店内には手錠や血まみれの人形が飾られ、日常とはかけ離れた空気が漂う。客の顔ぶれもまた、個性豊かだったという。
 「普段はスーツ姿のサラリーマンが突然女装をして来店することもあれば、まわし一丁で『もう会社ほんま無理やわ~』と愚痴をこぼす人、セーラー服を着たおじさん、自称『殺し屋』までいましたよ」と宮悪さんは笑う。
 女装イベントやアングラ演劇、SMパフォーマンスに全裸芸――。
 味園ビルでは、奇抜な表現や趣味嗜好が当たり前のように存在していた。
 店は5月、近隣の雑居ビルに移転した。
 「一見客もほとんど来なくなった。やっぱり、味園という場の力が大きかった」。宮悪さんは十年来の常連客らと懐かしんだ。
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大阪:朝日新聞デジタル 2025-07-04 [Edit / 編集]

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