【2025参院選 政治とカネ】不信払拭は道半ばだ
自民党派閥の裏金事件が表面化してから1年半余りが過ぎた。この間「政治とカネ」問題は国政の最大焦点の一つとして推移し、戦後最大級の企業犯罪と言われたリクルート事件の時以来、約30年ぶりに抜本的な政治改革の機運も高まった。
果たして、不信を払拭する改革が進んだかと言えば、まだ道半ばと言わざるを得ない。各党の対応を、有権者は見定める必要がある。
裏金事件の実態解明や再発防止で十分な対応を示せなかった自民は、昨年10月の衆院選で大敗。続く臨時国会で、「ブラックボックス」との批判があった政策活動費の廃止が決まった。少数与党に転落した自民、公明が野党案を受け入れた。
国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)も、使途公開や残金の国庫返納を義務付ける法改正が、遅ればせながら実現した。政治改革が前進しているのは間違いない。
ただ、野党がかねて「改革の本丸」と位置づける企業・団体献金の扱いは棚上げされた状態だ。
「政策をゆがめかねない」として禁止を求める立憲民主党、日本維新の会など野党5党派に対し、自民、公明、国民民主3党は存続を前提に透明性を高めるとし、主張は平行線をたどる。与野党で結論を出すと申し合わせた期限は3度にわたって先送りされ、それは政治全体に向けた新たな不信の芽にもなっている。
野党側が禁止を訴える根拠の一つが、1995年に政党交付金制度を導入した際、企業・団体献金禁止を前提としていた経緯がある。自民はこれを否定するが、この時の政治改革で「金のかからない政治」を目指した事実は否定できないだろう。
裏金事件で政治不信がかつてなく高まった今、重要なのは有権者に疑問を持たれるような余地を極力、排することではないか。自公国3党が献金継続を訴えるのなら、国民に向けて具体的な使途など必要性を明確にする必要がある。
旧安倍派が政治資金パーティー券の販売ノルマ超過分を議員側に還流していた過程では、幹部と会計責任者の説明に食い違いがあり、いまだにつじつまが合わない。石破政権は実態解明に積極的とは言えず、結局、裏金はいつ、誰が、どういう目的で、という根本的な部分はほとんど分かっていない。
石破茂首相を巡っては、土産名目で10万円分の商品券を自民の衆院1期生に配る商品券配布問題も判明し、根深い金権体質をさらした。
政治改革を巡ってはおおむね、厳格化を求める野党が攻め、自民が守勢に回る構図となっている。参院選の公約で自民は「改正政治資金規正法にのっとり、政治資金の透明化と厳正な法令順守を一層推進する」と掲げた。具体性が問われる。
政治が国民の信頼を欠いたままでは、政策は求心力を欠き、実効性も限られてくる。与野党問わず信頼回復に努めていく必要がある。
高知新聞 2025-07-07 [
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