参院選終盤戦、鳥取・島根選挙区も舌戦激しく 主な候補者の戦いぶり
終盤戦に入った参院選鳥取・島根選挙区(改選数1)。20日の投開票に向け、各陣営が舌戦を繰り広げている。主な候補者のこれまでの戦いぶりを紹介する。
候補者の第一声の後、ガンバロー三唱をする支持者ら=2025年7月3日午前9時58分、松江市、垣花昌弘撮影鳥取・島根選挙区の候補者中山集氏(31) 国民・新顔
出川桃子氏(47) 自民・新顔
亀谷優子氏(39) 共産・新顔
倉井克幸氏(42) 参政・新顔
谷口直矢氏(47) 諸派・新顔
※届け出順。年齢は投開票日現在
国民・中山集氏 広島市で会社を経営する国民新顔の中山集氏(31)は父らの故郷が島根だが、山陰では無名だった。6月初旬の立候補表明以来、訴え続けるのが、3月に生まれた第1子を念頭に置いた「彼らの世代の未来への不安」だ。党が掲げる「手取りを増やす夏」を強調し、山陰に関わるテーマに農家の所得補償とガソリン暫定税率分の削減を挙げて「どうしても勝ちたいんです。ここで1議席……」と訴える。
党本部の榛葉賀津也幹事長が9日、島根県安来市に応援に駆けつけた。「31歳だよ。どでかい敵、自民党に挑戦しています。すごい勇気。こんな未来ある青年をつぶしちゃいけない。これからの日本を背負うからであります」。野太い声で熱弁した。
島根には党所属の県議、市議がいて県連があるが、鳥取に実働の県組織はない。頼みは推薦を受ける連合島根・鳥取。公示直後のポスター貼りは、島根のほとんどと鳥取の約半分を連合が担った。
一方、野党共闘で支援する立憲の熱量は高いとは言えない。中山氏の島根での街頭演説初日となった6日、立憲の亀井亜紀子氏(衆院島根1区)が松江市で応援演説した。少数与党となっている衆院の状況説明に時間を割いた後、中山氏に言及した。
「厳しい戦いをしています」「参院選は2週間以上ある。最後まで分からない」と激励したものの、立憲としては「選挙カーには乗らない。依頼があれば弁士を出す」が基本方針だ。
立憲が比例区に擁立した島根県連職員の新顔は、単独で別行動の選挙戦を展開している。
国民民主党本部の榛葉賀津也幹事長(左)の応援を得て演説する中山集氏=2025年7月9日午後5時53分、島根県安来市、中川史撮影自民・出川桃子氏 公示2日前の7月1日、島根県浜田市であったミニ集会で、自民新顔の出川桃子氏(47)はこう訴えた。「自民党という組織を守るために立候補するわけではない。地方の暮らしを守っていきたい一心で決心した」
集会は、島根県議会最大会派「自民党議員連盟」に所属する党浜田支部長の大屋俊弘県議(73)が設定した。県連総務会長を務めるベテラン。午前9時~午後6時の1時間ごと、計9カ所に自身の支援者を10~30人ほど集め、出川氏を「若い新進気鋭の候補。私が自信と誇りを持って推薦できる人物だ」と紹介した。
出川氏は3月末まで島根県議会第2会派「自民党ネクスト島根」の県議だった。両会派は参院選の立候補予定者を決める2月の予備選でそれぞれ候補を擁立し、僅差(きんさ)でネクストの出川氏が勝利した。
議員連盟は2019年の知事選で丸山達也知事を支援し、ネクストは対立候補を推した県議らの会派の流れをくむ。44年ぶりの保守分裂となった6年前の知事選を想起させる予備選となった。公示後は議員連盟の県議も出川氏と街頭に立つが、予備選のしこりを心配する声は今も聞かれる。
陣営の最大の懸念材料は「政治とカネ」の問題に端を発する自民党への逆風だ。衆院島根1区は昨年4月の補選で、小選挙区制導入以降、初めて議席を失った。そして同10月の総選挙でも議席を奪還できなかった。石破政権に期待したという60代の党員は「物価高の中、収入が少ない人は生活に困っている。収入が上がるまでの間、消費税を下げればいいのに。国民の感覚とずれている」と失望を隠さない。出川氏は取材に「逆風はひしひしと感じている。私の感覚では緩んだとは思わない」と語った。
藤井一博参院議員(左から2人目)と一緒に、握手をして支持を訴える自民党の出川桃子氏(左)=2025年7月12日午前10時1分、鳥取県智頭町、垣花昌弘撮影共産・亀谷優子氏 「今の自民、公明の政治では希望を持って生きるのはなかなかできないのでは。自公を過半数割れに追い込む一番の力は日本共産党の躍進です」
5日、松江市の大型商業施設前でマイクを握った共産の亀谷優子氏(39)。消費税率5%への減税や賃上げ実現を訴え、コメ価格の高騰を「自民党政治の責任」として農業予算を増額するとアピールした。
共産は全国32の1人区のうち17選挙区で立憲や無所属と候補を一本化した。参議院でも自公を過半数割れに追い込もうと意気込む。鳥取・島根選挙区では野党共闘は実現せず、立憲は国民の候補を支援する。共産の尾村利成島根県議は「企業・団体献金や原発を容認する国民民主党は自民党政治の補完勢力。共闘はあり得ない」と語る。
6月の東京都議選で共産は5減の14議席に後退したが、候補を立てた24選挙区での得票は、昨年の衆院選で同じ地域で得た比例票の1.3倍に。自民や国民は大きく減らしているとして、田村智子委員長は「政治的力関係の前向きの変化を勝ち取った」。比例の獲得目標は島根県で3万票、鳥取県で2万6千票だ。
亀谷氏は昨年10月の衆院選島根2区に続く国政挑戦。上代善雄島根県委員長は、衆院選より選挙カーに手を振ってくれる人がかなり増えたと感じているという。「自民党政治と正面から対決しているのが日本共産党。今の矛盾した社会を何とかしてほしいという人は日本共産党に期待しているのでは」
有権者と言葉を交わす共産党の亀谷優子氏=2025年7月14日午後5時55分、松江市、垣花昌弘撮影参政・倉井克幸氏 参政の倉井克幸氏(42)の応援に神谷宗幣代表が山陰入りした15日、演説会場となったJR松江駅前には数百人が詰めかけた。倉井氏は「参政党に追い風が吹いている。皆さんが参加することでもっともっと大きな風にしていただきたい」と訴えた。
30代男性は「神谷代表がメディアでいろいろ取り上げられているので見に来た。メディアでは(発言が)切り取られるので、直接聞かないと」。
「日本人ファースト」を掲げ、党勢拡大を続ける参政。参院選では全45選挙区に加え、比例に10人を擁立した。結党は2020年。保守色を打ち出して支持を広げ、22年参院選で1議席、24年衆院選で3議席を獲得し、今年6月の東京都議選では3議席を得た。党所属の国会議員は現在5人だ。
地方選挙でも存在感を示し、島根県海士町と隠岐の島町、鳥取県日野町と大山町に1人ずつ計4人の党所属の町議が誕生している。
倉井氏はウルトラマラソンのランナーとしての経験を生かし、党ののぼりを掲げて選挙区内を走りながら知名度アップを狙う。
平下智隆島根県連会長によると、倉井氏が住む島根県では4月末に300人ほどだった党員・サポーターは約400人に増えた。昨年の衆院選で投票先を自民から国民に変え、今回の参院選では参政を支持する人もいるといい、追い風の背景をこう分析する。「既存政党に対する失望感があり、参政党が新たな選択肢を提示した」
神谷宗幣代表(右)と共に支持を訴える参政党の倉井克幸氏=2025年7月15日午前10時55分、松江市、垣花昌弘撮影
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島根:朝日新聞デジタル 2025-07-15 [
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