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木の上の軍隊 葛藤する姿、ざわめく記憶

まちのほとり座 実話をもとにしたこの物語は、住民をも巻き込んだ苛烈(かれつ)な地上戦として知られる「沖縄戦」という歴史からこぼれ落ちた断片だ。
 戦況を知らぬままガジュマルの枝の間に揺れる二つの影。やがて突如訪れる虚無感、それに抗(あらが)う正義感の狭間(はざま)でただひたすらに葛藤するその姿と、状況によって良くも悪くも変貌(へんぼう)してゆく人間の生々しさを強く感じ、自分の記憶がざわめいた。
 なんともいえない孤独感や先の見えない時間の重さは、どこか人生のとある局面と重なってくるようにさえ思える。責任や立場、あるいは自分自身の弱さに縛られて立ち止まったことや、声を潜めるしかなかった瞬間など、一度は味わったことがあるのではないだろうか。それでも前に進もうとする原動力は「慈しむ心」なのかもしれないと、胸の奥の余韻として静かに揺れ続けた。(ほとり座 田辺和寛)
 ◆23日~9月7日、監督平一紘、日本、128分。
◇ほとり座(https://hotori.jp

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富山:朝日新聞デジタル 2025-08-22 [Edit / 編集]

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