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「琵琶湖の怪談 聞かせたろか」 湖太郎さんの独演会の思いとは

 「琵琶湖の怪談 聞かせたろか‼」という独演会が、大津市の商店街であった。おどろおどろしいだけでなく、おかしみがある話もあった。語り手の地方公務員、湖太郎(こたろう)さん(40)=本名非公開=は、どんな思いを込めたのか。
 「大蛇が叫びます。『わたしはあの時、あなたと一緒に琵琶湖に身を投げた娘です。死んでもあなたへの思いがなくなることはありませんでした』」
 大津市中央1丁目の大津百町館。9日、子どもを含む二十数人が集まり、壇上の湖太郎さんの話に聴き入った。
 湖太郎さんの持ちネタは50話ほど。今昔物語集や諸国百物語といった古典から探した滋賀に関わるものが約20話。このほか、居酒屋で店員やカウンターの横に腰掛けた客に、「不思議な体験をしたことありませんか?」と尋ね、集めた話も多いという。
 この日語ったのは、古典や自ら集めてきた話の「京阪石坂線21の恐怖」。大津市の石山寺駅から坂本比叡山口駅までの石山坂本線21駅すべての地域から一つずつ紹介した。
 「目玉しゃぶり」「油赤子」「兵隊さんがくる」「見てるよ」といった題名の怖い話を、泥絵の具で描いた絵を紙芝居のように見せながら語った。「ウジャウジャウジャ」「ザッザッザッ」といった言葉の響きが薄気味悪さを盛り上げた。
 「ピーヒャラドンドン」という楽しげな音に誘われて神社に行ったがだれもいない。タヌキの仕業だったという「狸(たぬき)ばやし」といった愉快な話もあった。
 紙芝居の絵はどれも温かみや親しみを感じさせた。
 語りのあと、会場に残った人たちで車座になり、それぞれの怖い体験話を披露し合った。
 大津市在住の湖太郎さんは「近江怪談クラブ」(5人)の代表。昨年11月に結成以来、初めての独演会だった。
 湖太郎さんは、小学生の時に小泉八雲の「耳なし芳一」などの「怪談」を図書館で借り、怪談の魅力にとりつかれたという。
 「怪談は地域の文化や歴史にかかわるものが多い。ふるさとの魅力を再発見してほしい」と話す。人の死にかかわる話も多いので、怪談を聴く人が死者の思いや願いにも想像をめぐらせることを願う。「戦争や災害の記憶など先代とのつながりも大切にしたい」
 大津市の絵画教室講師の女性(41)は保育園児の長女(5)と参加した。「ふだん不気味だと思っている場所が、話を聴いて妙に納得できた。怖いけどおもしろかった」と話した。
 「ホラー映画は苦手」と苦笑いする湖太郎さん。「滋賀で生まれ育ったが、知らなかった文化や歴史に触れることができ、自分自身楽しい。怪談を聴いた人が現場に行ってみようかなと思ってくれたらうれしい」と話している。
 問い合わせは近江怪談クラブ(ohmikaidan@ymail.ne.jp)へ。

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滋賀:朝日新聞デジタル 2025-08-23 [Edit / 編集]

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