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「県立中部病院」現地建て替えの方向へ 地域は歓迎、現場からは懸念<ニュースのつぼ>

 老朽化による建て替え場所に関して、現地か移転かで意見が分かれていた県立中部病院(うるま市宮里)。県病院事業局は現地建て替えの将来構想を策定するなど、現地建て替えを推進してきた。県議会では移転を求める請願が継続審議となり、決断が先延ばしされた状況だ。中村正人うるま市長はこれまで移転を推してきたが、現地建て替え推進に立場を変えた。地元や関係者からは期待や懸念の声が上がっている。
 中村市長は12月25日、市長選への出馬表明会見で、中部病院への県議会の対応などに触れ「2月までに答えを出すと期限を設定していた。(移転が)大変厳しい状況だと判断した」と考えを変えた理由を話した。
 中部病院がある宮里自治会の照屋聡会長は中村市長が立場を変えたことに「ほっとした」と胸をなで下ろす。同院周辺の5自治会と二つの通り会は現地建て替えを求める嘆願書を県などに提出していた。中部病院に勤務する人などが周辺でアパートを借りたり飲食したりするなど「中部病院と共に発展してきた」と地域の歩みを語る。
 「利用者としても現地建て替えの方が交通の便も使い勝手もよい」と現地建て替えの進展に期待を寄せる。
 移転先として名前が挙がっていたうるま市の仲嶺・上江洲地区。土地区画整理事業が進展中の同地区は現在、準備組合が設立されている。同組合の名護宏雄委員長によると開発に向け、測量などの下調べの段階にある。中部病院の移転について「具体的な話は上がってきていない。情報がなく議論しようがない」との状況だった。地権者らにとっては「降って湧いた話。まだ俎上(そじょう)にも上がっていなかった」と話した。
 中部病院の玉城和光院長は現地で建て替える場合、工事期間中の研修・医療機能の低下を懸念する。同院は離島医師の育成も含め、研修医の育成に力を入れている。玉城院長によると県内の離島やへき地に勤務する中部病院出身の医師は多い。
 「中部病院将来構想は県全体の医療提供体制に関わる重要な事項だ」と指摘する。「どちらにもメリット・デメリットはある」とした上で、現地建て替えについて「デメリットを克服する議論ができていない。現場としては厳しいとの考えだ」と懸念は払拭されていない。
 県病院事業局は2024年9月に現地建て替えの将来構想を策定した。同構想では将来的な患者の増加に備え、現在の延べ床面積の1.87倍の広さが必要だと算出しており、医療機能を維持し、将来的な医療需要への対応が十分可能だとしている。 
(金盛文香)


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琉球新報 2025-01-10 [Edit / 編集]

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