待機児童が最多の大津市、あの手この手 「潜在保育士」の活用も焦点
滋賀県内で昨年、保育所などに入れなかった待機児童数が、大津市で全国最多になるなどして急増した。原因のひとつが保育士の不足だ。なんとか保育士を確保しようと、市は〝あの手この手〟の状態だが、道のりは険しい。
「それをやったら保育士の確保が進みますという妙案があれば、全国の各自治体が取り組んでいる。様々な取り組みを重ね合わせていきたい」
大津市の佐藤健司市長は、昨年12月25日の定例会見でそう述べた。昨年4月1日現在の県内の待機児童数は353人で、うち大津市が184人で全国最多。守山市が58人、栗東市が26人、草津市が17人と続く。
大津市によると、市内の保育施設に空きはあるが、保育士が足りないため児童を定員まで受け入れることができていない。
大津市は今年度、資格を持ちながら保育現場で働いていない「潜在保育士」への就職支援給付などの制度を新設。来年度の公立保育士の採用予定人数は、今年度の約2倍の29人に増やした。
そのほか、小規模保育事業所(定員19人)の設置補助を行い、来年度に待機児童が多い2地域に開設の予定だ。公立幼稚園28園と認定こども園1園では、一時預かりの時間を来年度から延長する。
保育園を休園して保育士の再配置も さらに、保育士の配置を見直すため、JR大津駅近くにある逢坂保育園を3月末で休園することを決めた。園長を含む保育士8人を他園に配置することで、待機児童を20~40人減らせると試算している。
同園は0~2歳が対象だ。定員70人に対して17人が在園しており、休園によって0~1歳の7人が近くの保育園などへの転園を余儀なくされる。市は「通常のプロセス(方法)ではない」として理解を求める。
この決定については、保護者らから「保護者や園児をないがしろにしている」などと憤りの声が上がった。「大津市の保育を充実する会」(代表=青木美智子・京都橘大学准教授)をつくり、撤回を求め続けてきたが、市は方針を変えていない。
来年度の保育士採用は苦戦している。補欠を含み37人を内定としたが、辞退者が出て採用予定の29人を下回り、追加募集をかけた。
すでに来年度の1次入所申し込みは終了した。今年度から10人増の2326人が申し込み、入所先を現在調整しているという。
滋賀県が注目する「潜在保育士」 県内全体でも待機児童数はコロナ禍前に近づいている。そんな中、県が注目するのが潜在保育士だ。
県によると、保育士資格を持っている人は県内に約2万5千人おり、うち約1万人が潜在保育士と推計されている。「新規獲得は大事だが限界がある。潜在保育士を生かしていきたい」と担当者。
県保育士・保育所支援センターは、県や大津市の委託事業として、潜在保育士の就職支援などを行っている。
草津市のイオンモール草津で昨年12月17日にあった「保育のしごと相談会」。大津市内の公立保育園で40年近く働いた松尾まゆみさんらが、訪れた人の相談に乗った。
松尾さんによると、家庭を大切にしたい潜在保育士と、保育施設が求める働き方が合致しないケースが多い。フルタイムでなくても働ける職場づくりも必要だと指摘する。
この日は午前10時~午後4時に6人が訪れた。草津市の女性(33)は子どもが2人いる潜在保育士。来年度から働きたいといい、「働きやすさは園長先生の人柄で全てが決まる。賃金はどこもそんなに変わらないので、見学して見極めて、長く続けられるところに就職したい」と話した。
松尾さんは、学生らに保育士の魅力を伝える仕事もしている。だが、そもそも保育士をめざす学生が減っているといい、「潜在保育士さん、力を貸して下さい」と呼びかけている。
1月18日に「保育のしごと マッチングフェスタ」 ◇
「保育のしごと マッチングフェスタ」が1月18日午後0時半~3時半、イオンモール草津2階のイオンホールである。保育資格の有無にかかわらず、保育の仕事を紹介する。問い合わせは県保育士・保育所支援センター(077・525・5203)。
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滋賀:朝日新聞デジタル 2025-01-16 [
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