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閉館した「なにわ海の時空館」、再整備へ 負の遺産から脱却なるか

 2013年に閉館した大阪市の海洋博物館「なにわの海の時空館」が、公募で選ばれた事業者によって今年から再整備される予定だ。かつて無駄なハコモノとして「負の遺産」とも呼ばれた施設。4月に始まる大阪・関西万博や、今後のカジノを含む統合型リゾート(IR)開業といった効果が期待できそうななか、順調に船出できるか。
 時空館は、万博が開催される人工島・夢洲(此花区)に隣接した咲洲地区(住之江区)にある。大阪メトロのコスモスクエア駅から徒歩10分ほど。大阪港の海上に浮かぶ球形のドーム棟(直径70メートル、高さ35メートル)が特徴で、「海の交流史」をテーマにした施設だった。
 活用事業を担うのは、観光コンサルタント会社「シンフォニックスリール」(中央区)。市の事業者公募を経て、一昨年の11月に選ばれた。計画では、芸術文化などに触れられる体験型博物館を整備するとしている。
 市は昨年12月、建物を6160万円で売却し、1万平方メートル近い土地を月約220万円で貸し出す契約を事業者と結んだ。横山英幸市長は「『あの建物は何だ』と万博中も注目を集める可能性がある。建物はこうなると多くの人に知ってもらい、ベイエリアのシンボルとして発展してほしい」と期待感を示す。
 時空館は荒波続きだった。
 もともと、市が00年に176億円をかけて開館。ところが、入館者は年間10万人前後と低迷し、毎年約2億~3億円の赤字続きに。12年、橋下徹市長(当時)のもとで閉館を決めた。
 市は、時空館や、館内にある江戸時代の和船を10億円かけて復元した「浪華(なにわ)丸」(全長約30メートル、高さ約27メートル)の撤去には、数億円ものコストがかかると試算。施設を残したまま、民間事業者による活用を模索してきた。13年以降、2回にわたって公募したが、応募はゼロだった。
 市は23年になり、夢洲でのIR開業のめどが立ったことを受け、3回目の公募を実施。ようやく事業者が決まった。
 ただ、決まってからも、すんなり進んだわけではない。市によると、契約は資金調達の難航から1年遅れに。昨年12月下旬にようやく締結にこぎつけた。契約までの間、市が肩代わりした施設の光熱水費約600万円は今後、返還を求めるという。
 シンフォニックスリール社の担当者は「万博やIRの開業を控えるエリアで、ポテンシャルが高く好機だ」と語る。一昨年11月の事業者決定時、社が出した発表資料では、「万博開催の25年春から段階的な事業開始を予定している」としていた。
 市によると、開業に向けた工事は新年度から始まる予定だが、「10年間使われていない施設で改修が必要な場所が多く、万博の開催期間中(4~10月)に完成するかはわからない」(担当者)という。シンフォニックスリール社は、開業時期などの詳細を今月中に示すとしている。
 また、土地の賃貸契約は30年間。市は、資金計画や見通しを繰り返し確認し、事業を継続できると判断したとしている。担当者は「必要に応じて立ち入り調査するなどして、状況を確認していく」と話している。

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大阪:朝日新聞デジタル 2025-01-18 [Edit / 編集]

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