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「めだかの学校」ゆるーく25年 誰もが交流できる場 週2回50円喫茶―ちいきのおと(207)寿町(安芸市)

飲み物片手に談笑するお年寄りたち。「めだかの学校」には居心地の良さを求めて人々が集う(写真はいずれも安芸市寿町の市健康ふれあいセンター「元気館」)
「生きがい」「ここで人生変わった」
 障害や年齢にかかわらず誰もが交流できる場を―。安芸市寿町の海のすぐそばにある市健康ふれあいセンター「元気館」で、週2回開かれている「めだかの学校」が今夏、開校25年を迎える。当初から続くドリンク1杯50円の喫茶が要の“教室”に集った人は延べ22万人超。「誰が生徒か先生か」と歌う童謡「めだかの学校」の歌詞そのままに、上下関係なく、緩く過ごせる場を訪ねた。
 1月下旬の水曜日の朝。同館ロビーに「おはよう」「ぬくいねえ」とお年寄りたちが姿を現した。「ぼちぼちじゃ」「まあまあ」と朝の会で体調を報告し終えると、エプロン姿のボランティアが「コーヒー飲むひと~」。5人ほどが一斉に手を上げた。
 注文が入れば、長机でお茶、カルピス、自家製ゆずジュースも用意し、給仕する。最年長の内川美和子さん(91)は、いつも近所の鮮魚店の弁当を持参し、コーヒーなど2、3杯をお供に一日談笑するという。「ここは生きがい。おかげで150歳まで生きると、太いこといいよらあえ」
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1杯50円のコーヒーを注ぐボランティア
 学校は同市が毎週水、金曜日の午前10時から午後3時まで開いている。喫茶は、ボランティアらが代金収入で運営。物価高の中でも、飲み物を安く買い付けたりとやりくりし、「お金のない人も居づらくないように」と一杯50円を維持している。
 ボランティアの一人で、“まきちゃん”と呼ばれている女性(48)は、人と話すのが苦手で家から出られなかった。30歳の時、市職員に誘われて手伝い始めた。「最初の頃は慣れるのに必死。人の後ろに隠れていた」と振り返る。
 5分、10分と滞在できる時間が長くなり、「今ではようしゃべる人と思われちゅう。ここに来て人生が変わった」と笑顔で言う。現在は結婚し、清掃の仕事をしている。
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ぐっすり眠る男性。喫茶の開始前は準備、終了時は片付けを手伝う
 日当たりのいいベンチでぐうぐう寝ていた70代の男性が午後1時過ぎ、のそっと起き上がった。まきちゃんが「2(に)?」と指を立て聞くと男性もピースして「2」。寝起きに決まってアイスコーヒーを2杯分飲む。「ここは人の声も聞けるし、縛られることも、あれこれ言われることもない」。着ていたジャンパーには「一匹狼(おおかみ)」と書かれたワッペンが縫い付けられていた。
片隅では書道教室も開かれる
 一画で書道教室を開いていた安岡東岳さん(58)は29歳の時、病気で失業。「半紙の前では、つらい気持ちにならない」。人とつながりたいと、得意の書道を教えている。
 百歳体操帰りのおばあちゃんの集団もいれば、じっと一人でテレビに向かい時代劇を見ている人もいて、過ごし方はてんでばらばら。自由が満ちる場は、きょうもゆるーく人々をつなぐ。(安芸支局・加藤風花)
《ちょっとチャット》
仁井田丈夫実さん(79)
 新春の安芸海岸での寒中水泳は、60回目の今年まで皆勤しちゅう。みんな赤ふんどし姿で泳ぎよったけど、今は自分だけになった。地区はNTTの支店があった頃、お昼を食べに出る職員でにぎわいよった。今は喫茶店もない。毎日夕方、同級生2、3人と話しながら浜を歩くのが日課よ。
 寿町は安芸市中心部の南、安芸海岸に面した地区。1999年に開館した市健康ふれあいセンター「元気館」の近くには高齢者活動センター、総合社会福祉センターなどが並び「健康文化都市の拠点」と位置づけられている。2024年12月末現在、72世帯120人。





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高知新聞 2025-01-26 [Edit / 編集]

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