小社会 宇宙から見ると
昨年急逝した米国の元宇宙飛行士ウィリアム・アンダースさんがこんな言葉を残している。「われわれは月を探査するためにここまで来たが、最も重要なのは地球を発見したことである」
1968年、アポロ8号に搭乗。月の周回飛行に成功し、地球が月の地平線上に浮かぶ「地球の出」を撮影した。青く輝く星に乗組員たちは心奪われたに違いない。
宇宙飛行士が地球に魅せられるのはいまも同じで、日本人飛行士の油井亀美也さんは日本の景色にも感激したようだ。国際宇宙ステーションから眺めていると、列島の山々の緑が変色しているのに気づいた。紅葉だったという。
地球を外から拝んでみたくなる。いや、世界の為政者はそうすべきではないか。油井さんは講演で、宇宙から一目瞭然の異変にも触れた。「チベット高原の氷河があまりにも少なくなっていて、探すのが大変だった」
宇宙から俯瞰(ふかん)すると、高原は中国やインドの「水がめになっている」。氷河は徐々に解けていってこそ広く恵みをもたらすが、そこでの異変は地上では遠い地の出来事になりがちだ。自分たちの問題だと「きっと気がつかないと思う」。
米国がパリ協定を離脱した。気候変動対策の国際協調が再び後退しかねない。トランプ大統領はぜひ宇宙へ。じっこんの実業家はロケット会社の経営者でもある。美しき地球、世界が一つの地球を見ても、「米国第一」と言うだろうか。
高知新聞 2025-01-27 [
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