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ハンセン病生き抜いた姿を 「麦ばあの島」原画展 瀬戸内市民図書館

 ハンセン病をテーマにした漫画「麦ばあの島」(古林(ふるばやし)海月(かいげつ)著、すいれん舎)の原画展が、瀬戸内市民図書館(岡山県瀬戸内市邑久町)で28日から始まる。強制隔離や社会の差別・偏見に直面しながら、たくましく生き抜いた女性たちの姿が描かれている。12月14日まで。
 「麦ばあの島」は全4巻、2017年に出版された。望まぬ妊娠をした短大生の小林聡子が、ヘアサロンを営む高齢女性の上原麦(麦ばあ)と交流を重ねるなかで、自らの生き方を見つめ直していく。麦ばあは戦前、17歳で家族と引き離され、ハンセン病療養所で生きてきた過去があった。
 麦ばあや、麦ばあが療養所で出会った女性たちの人生を通じて強制隔離の歴史や療養所での生活、結婚した男女が強いられた断種や堕胎など、実際にハンセン病の入所者らが受けた被害に加え、家族が差別や偏見に苦しんだ様子を描いている。
 制作にあたり、古林さんは当事者ら約20人を取材。関連資料を精読し、大学教授の監修を受けた。療養所に向かう船が発するポンポンという音、ハンセン病で足指に影響が出た人も使えるよう、サンダルのように履ける履物が使われていたこと……。細部までこだわった。
「外島保養院を描きたかった」 登場する人物は架空だが、舞台は実在の国立療養所「邑久光明園」(瀬戸内市)や、同園の前身で大阪市にあった外島保養院だ。海抜ゼロメートル地帯にあった外島保養院は1934年、室戸台風の直撃を受け、高潮によって施設はほぼ全壊し、200人近い死者を出している。
 古林さんは漫画家になる前は兵庫県職員だった。慰問のため99年に「長島愛生園」(瀬戸内市)、翌2000年に光明園を訪問。外島保養院の存在を知らず、光明園の入所者にがっかりされた経験から「外島保養院をきちんと描きたかった」という。
 原画はB4サイズを中心に800枚以上のページの中から45枚を厳選して展示する。ハンセン病の患者が経験したエピソードで、象徴的なシーンを選んだ。古林さんは「かわいそうだなと、そこでとどまってしまうのではなく、こうした環境から立ち上がってきた人たちの強さやすごさに、尊重の思いを抱いてもらえれば」と話している。
 図書館2階には、ハンセン病の資料を集めたコーナーが設けられている。光明園や愛生園の歩みや、ハンセン病をテーマにした作品、回復した人々の著書などを読むことができる。図書館の小林裕治館長は「(ハンセン病の歴史は)地元の歴史の一つ。原画展で正面から考えてもらい、問題意識を子どものころから学んでもらいたい」と語る。
 月曜休館。開館時間は午前10時~午後6時(木、金曜は午後7時まで)。原画展最終日の12月14日は午後3時まで。同日午後1時半~午後3時には古林さんの講演が開かれる。申し込み不要で無料、先着40人。問い合わせは瀬戸内市民図書館(0869・24・8900)へ。(北村浩貴)

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岡山:朝日新聞デジタル 2024-11-27 [Edit / 編集]

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